
空き家を貸した後の修繕費は誰が負担する?大家・入居者の負担区分と原状回復を解説
空き家を賃貸に出したあと、修繕費はどこまで大家が負担し、どこから入居者負担になるのでしょうか。
基本的には、経年劣化や通常の使用によって生じた不具合の修繕は大家負担、入居者の故意・過失や通常とは異なる使い方によって生じた破損などは入居者負担と考えます。ただし、実際の負担区分は、不具合の原因や賃貸借契約の内容によって異なるため、個別に判断する必要があります。
特に、長期間使われていなかった空き家や築年数の古い住宅では、賃貸開始後に給湯器や水回り設備などの不具合が発生することもあります。修繕費の負担区分を理解していないと、思わぬ出費や入居者とのトラブルにつながる可能性があります。
そのため、空き家を貸す大家は、民法や国土交通省のガイドラインに基づく修繕費の基本的な考え方を理解し、入居中の修繕と退去時の原状回復を区別しておくことが重要です。
この記事では、空き家を貸した後の修繕費について、大家と入居者の負担区分を具体例とともに解説します。さらに、退去時の原状回復や敷金精算、修繕トラブルを防ぐための実務上のポイントも紹介します。
これから空き家の賃貸活用を検討している方はもちろん、すでに入居者がいる物件を管理している大家の方も、ぜひ参考にしてください。
賃貸の修繕費は誰が負担する?大家と入居者の基本ルール
空き家を賃貸に出すと、大家には建物や設備を入居者が使用できる状態に維持するための修繕義務が生じます。
ただし、すべての修繕費を大家が負担するわけではありません。入居者の故意・過失によって生じた破損などは、入居者負担となる場合があります。
また、入居中に発生する設備の故障や建物の不具合に対する「修繕」と、退去時に問題となる「原状回復」は、法律上の考え方が異なります。
大家と入居者の負担区分を正しく理解するためには、まずこの違いを押さえておくことが重要です。

■入居中の修繕は原則として大家が行う
民法606条第1項では、賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕を行う義務を負うと定められています。
例えば、経年劣化による給湯器の故障、老朽化した給排水管からの水漏れ、建物の雨漏りなど、入居者に責任のない不具合については、原則として大家が修繕を行います。
ただし、入居者の責任によって修繕が必要になった場合には、民法606条第1項ただし書により、大家は修繕義務を負いません。
このように、入居中の修繕については、不具合の原因を確認することが重要です。
■入居者の故意・過失による修繕は入居者負担
入居者が設備を不適切に使用して破損させたり、不注意によって建具や壁を傷つけたりした場合は、入居者が修繕費を負担することがあります。
また、入居者には、借りている建物や設備を適切に使用・管理する善管注意義務があります。
例えば、水漏れに気づきながら長期間放置し、床や壁の損傷を拡大させた場合には、入居者の責任が問題となることがあります。
ただし、設備が故障したという事実だけで入居者負担になるわけではありません。
故障の原因や使用状況、契約内容などを確認し、個別に判断する必要があります。
■退去時の原状回復は入居中の修繕とは別に考える
入居中の修繕とは別に、賃貸借契約が終了して入居者が退去する際には、原状回復の問題が生じます。
民法621条では、賃借人は通常の使用及び収益によって生じた損耗や経年変化を除き、賃借人の責任によって生じた損傷について原状回復義務を負うとされています。
例えば、長年の使用による壁紙の自然な変色や床の日焼けなどは、原則として大家負担です。
一方、入居者の不注意によって壁に大きな穴を開けた場合や、通常の使用を超える汚損が発生した場合などは、入居者負担となることがあります。
なお、原状回復とは、借りた当時の新品の状態に戻すことではありません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、通常損耗や経年変化は原則として貸主負担とする考え方が示されています。
退去時の費用負担については、後述する「退去時の原状回復と敷金精算で押さえるべきポイント」で詳しく解説します。
■ 大家と入居者の修繕費負担の基本的な考え方
| 区分 | 大家が主に負担する例 | 入居者が負担する場合がある例 |
|---|---|---|
| 建物構造部分 | 経年劣化による雨漏り・ひび割れ | 入居者の過失による壁面などの破損 |
| 設備機器 | 老朽化による給湯器・配管の故障 | 不適切な使用による設備の破損 |
| 内装・建具 | 通常使用による壁紙の変色・床の日焼け | 不注意による壁の穴・建具の破損 |
入居中の修繕費 大家と入居者の具体的な負担ライン
入居中の修繕費は、建物本体や主要設備の不具合なのか、入居者の使い方に起因する損傷なのかによって、大家と入居者の負担が異なります。
民法606条では、賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕を行う義務を負うと定められています。ただし、入居者の責任によって修繕が必要になった場合は、この限りではありません。
また、東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」でも、入居中の修繕費について、貸主と借主の負担に関する一般的な考え方が示されています。
こうした法律や公的ガイドラインを参考に、不具合の原因や賃貸借契約の内容を確認することが、入居中の修繕トラブルを防ぐ第一歩になります。
大家が負担する代表例としては、建物の主要構造部分の損傷や給排水管・電気配線など幹線部分の故障、老朽化による設備の交換などが挙げられます。
自治体のガイドラインでも、基礎や土台、屋根、共用配管など、入居者では対応できない部分の修繕費は管理者側の負担とする整理が示されています。
ただし、同じ部位であっても入居者の過失が明らかな場合は入居者負担となるため、原因の特定と記録が重要です。
修繕依頼を受けた際には、故障の状況や発生経緯を丁寧に確認し、写真や報告書として残しておくと負担区分の判断に役立ちます。
一方、入居者の故意・過失や善管注意義務違反によって建物や設備が損傷した場合には、入居者が修繕費を負担することがあります。
例えば、入居者の不注意によってガラスや網戸を破損した場合や、鍵を紛失して交換が必要になった場合などは、入居者負担となることがあります。
ただし、ガラスや網戸の破損であっても、経年劣化や自然災害など、入居者に責任のない原因による場合は、原則として大家側の負担となります。
また、結露や水漏れなどの不具合を入居者が長期間放置し、カビや建物の損傷を拡大させた場合には、入居者の責任が問題となることもあります。
このように、修繕費の負担は、破損した部位や修繕金額の大小だけで決まるものではありません。損傷の原因や発生状況、賃貸借契約の内容などを確認し、個別に判断することが重要です。

部位・設備 | 大家負担となる例 | 入居者負担となる例 |
|---|---|---|
建物本体 | 経年劣化によるひび割れ補修 | 衝突による壁面破損 |
給排水設備 | 老朽配管の漏水修理 | 異物投入による排水詰まり |
内装・建具 | 通常使用によるクロスの変色 | 入居者の過失によるガラス・網戸の破損交換 |
■電球交換などの小さな修繕は誰が負担する?
賃貸住宅では、電球や蛍光灯の交換、水栓のパッキン交換など、日常生活の中で比較的小規模な修繕が必要になることがあります。
こうした小さな修繕については、賃貸借契約書に「小修繕特約」を設け、入居者が自ら対応できる範囲を定めている場合があります。
例えば、電球の交換や水栓のパッキン交換など、専門業者による大掛かりな工事を必要としない作業については、契約内容に応じて入居者が費用を負担することがあります。
ただし、小修繕特約があるからといって、すべての軽微な修繕費を当然に入居者へ請求できるわけではありません。特約の具体的な内容や修繕が必要になった原因などを確認する必要があります。
特に、給排水管の老朽化や設備本体の故障など、建物の使用に必要な修繕については、原則として大家側の修繕義務が問題となります。
空き家を貸す際には、入居後のトラブルを防ぐためにも、入居者が対応する小修繕の範囲と、大家が対応する設備修繕の範囲を賃貸借契約書で明確にしておくことが重要です。
退去時の原状回復と敷金精算で押さえるべきポイント
退去時の原状回復義務は、民法や国土交通省のガイドラインを前提に考えることが重要です。
ガイドラインでは、入居者が通常の使用をした結果生じた汚れや傷、時間の経過による劣化は、原則として大家の負担と整理されています。
一方で、入居者の故意や過失による破損は入居者負担とされ、敷金精算の際の計算基準となります。
退去時のトラブルを防ぐためには、これらの一般原則を大家自身が正確に理解しておくことが出発点になります。
なお、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、民法や裁判例などを踏まえ、原状回復に関する一般的な考え方を整理したものです。ガイドライン自体に法律と同じ拘束力があるわけではなく、実際の費用負担は、民法の規定や有効な契約条項、損傷の原因などを踏まえて判断する必要があります。
原状回復に関して大家が独自の負担ルールを設ける場合は、「特約」の有効性に特に注意する必要があります。
例えば、通常損耗や経年劣化による修繕費まで入居者に負担してもらう特約を設ける場合には、その必要性や合理性、負担範囲の明確さ、入居者が内容を十分に理解して合意しているかなどが重要になります。
ただし、賃貸借契約書に特約を記載し、入居者が署名したからといって、すべての特約が当然に有効になるわけではありません。特約の内容や負担の程度によっては、その有効性が問題になる場合があります。
また、ハウスクリーニング費用を入居者負担とする特約についても、契約内容や金額、入居者への説明状況などによって判断されます。単に「退去時の費用はすべて入居者負担」と包括的に定めるのではなく、負担する内容や金額・算定方法をできるだけ明確にしておくことが大切です。
敷金から修繕費やハウスクリーニング費用を差し引く際には、民法や国土交通省のガイドライン、有効な契約条項などを踏まえ、費用の根拠を明確に説明できるようにしておくことが、トラブル防止につながります。
敷金精算での行き違いを防ぐには、退去立会いの前から資料を準備し、説明手順を決めておくことが効果的です。
具体的には、原状回復の負担区分表や国土交通省ガイドラインの要点を印刷し、入居時と退去時の室内写真、修繕見積書をそろえておくと、費用算定の根拠を示しやすくなります。
さらに、見積金額の内訳を「通常損耗として大家負担」「入居者の故意・過失による損耗」と項目ごとに分けて提示することで、入居者も納得しやすくなります。
自治体や消費生活センターにも同様の相談事例が多く寄せられているため、第三者の基準を踏まえた説明を行う姿勢が、大家への信頼向上にもつながります。
| 場面 | 大家が準備する資料 | 入居者への説明内容 |
|---|---|---|
| 入居前の契約時 | 負担区分表と特約条項 | 通常損耗と特約負担範囲 |
| 退去立会い前 | 入居時と現在の写真 | 損耗発生箇所と原因 |
| 敷金精算時 | 修繕見積書と内訳 | 大家負担分と入居者負担分 |
空き家を貸す大家が修繕トラブルを防ぐための実務対策
空き家を賃貸に出す際は、賃貸借契約書や重要事項説明書に修繕費の負担区分を具体的に記載し、事前に入居者と丁寧に合意しておくことが重要です。
国土交通省のガイドラインでは、経年変化や通常使用による損耗は原則として貸主負担とされており、この原則と異なる取り決めを行う場合には、内容を明確に示した特約が求められます。
そのため、単に「修繕費は入居者負担」といった抽象的な記載ではなく、どの部位・どの程度の損耗までが大家負担かを、部位別や事例別に整理した負担区分表を添付し、入居前の説明と書面での同意取得を徹底する必要があります。
さらに、空き家は使用していない期間に老朽化が進んでいることが多く、賃貸開始後に思わぬ設備故障が発生しやすいとされています。
そこで、大家側では定期的な建物点検と計画的な修繕計画を立て、給排水設備や雨漏りなど入居者の安全・衛生に直結する部分は、早期に改修しておく体制づくりが重要です。
空き家を貸し出す前に必要な修繕や、建物・設備の確認ポイントについては、関連記事「[空き家を貸す前に必要な修繕は?賃貸にする際の注意点とチェックリスト](https://www.linkbb.jp/blog/entry-843104/)」でも詳しく解説しています。
あわせて、火災保険や家財保険に付帯する設備の破損・水漏れ等の補償内容を確認し、必要に応じて特約を付けておくことで、予期せぬ修繕費の発生時にも大家側の負担を平準化しやすくなります。
空き家を賃貸する際は、想定賃料だけでなく、入居後に発生する修繕費や設備交換費も見込んで収支計画を立てることが重要です。
特に築年数の古い住宅では、給湯器や水回り設備、エアコンなどが入居後に故障する可能性もあるため、設備の使用年数や状態を確認し、将来の交換費用に備えておく必要があります。
また、雨漏りや給排水管の不具合など、建物の安全性や居住環境に関わる修繕については、入居者からの連絡を受けた際に速やかに対応できるよう、修繕業者との連絡体制を整えておくことも大切です。
空き家を貸す大家は、家賃収入だけで収益性を判断するのではなく、固定資産税や保険料、管理費などに加え、将来の修繕費も考慮した長期的な収支計画を立てることで、安定した賃貸経営につなげやすくなります。
築年数の古い空き家を賃貸として活用する際の判断基準や、貸し出すまでの具体的な手順については、関連記事「[古い家は貸せる?空き家を賃貸に出す前の確認ポイント・修繕・手順を解説](https://www.linkbb.jp/blog/entry-843105/)」も参考にしてください。

| 対策項目 | 大家の具体的行動 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 契約書・説明書面 | 修繕負担区分の明文化 | 費用負担トラブルの予防 |
| 点検・修繕計画 | 定期点検と計画修繕 | 重大事故や長期空室の回避 |
| 保険・専門相談 | 補償内容確認と相談活用 | 想定外出費の平準化 |
空き家の修繕費に関するよくある質問(FAQ)
Q. 賃貸物件のエアコンが壊れた場合、修理費は大家負担ですか?
エアコンが賃貸借契約上の設備として設置されている場合、経年劣化や通常使用による故障であれば、原則として大家が修理費や交換費用を負担します。
ただし、入居者の故意・過失による故障の場合や、入居者自身が設置したエアコンの場合は、負担の考え方が異なります。まずは契約書や設備表で、エアコンの取扱いを確認することが大切です。

Q. 給湯器が故障した場合、修理代は誰が支払いますか?
賃貸住宅に備え付けられた給湯器が経年劣化や通常使用によって故障した場合は、原則として大家が修理費や交換費用を負担します。
一方、入居者の不適切な使用などが原因で故障した場合には、入居者負担となることもあります。給湯器は日常生活に欠かせない設備であるため、故障の連絡を受けた際には速やかな対応が重要です。
Q. 水漏れが発生した場合、修繕費は大家と入居者のどちらが負担しますか?
水漏れの修繕費は、発生原因によって負担者が異なります。
例えば、給排水管の老朽化や設備の自然故障による水漏れは、原則として大家負担です。一方、入居者の不注意による設備の破損や、水漏れを認識しながら放置して被害を拡大させた場合などは、入居者に費用負担が生じることがあります。
Q. 退去時の壁紙やクロスの張替え費用は、入居者に請求できますか?
通常の生活による日焼けや経年劣化については、原則として大家負担となります。
一方、入居者の故意・過失による落書きや通常の使用を超える汚損・破損については、入居者に原状回復費用を請求できる場合があります。ただし、入居者負担となる場合でも、経過年数による価値の減少や補修範囲などを考慮して費用を算定することが重要です。
Q. 退去時のハウスクリーニング代を入居者負担にすることはできますか?
退去時のハウスクリーニング費用は、契約内容や室内の汚損状況などによって負担の考え方が異なります。
通常の清掃を行っている場合、次の入居者を迎えるための一般的な清掃費用は、原則として大家負担と考えられます。ただし、清掃費用を入居者負担とする特約が明確に定められ、その内容や金額などに合理性があり、有効と認められる場合には、入居者負担となることがあります。
まとめ
空き家を賃貸に出した後の修繕費は、法律やガイドラインで大家と入居者の負担範囲がおおむね整理されています。
しかし、実務では契約書の書き方や説明不足が原因でトラブルになりやすい分野です。
当社では、空き家の状態確認から、修繕費の負担区分を明記した賃貸借契約書の作成、退去時の原状回復や敷金精算のサポートまで、一貫してお手伝いしています。
また、相続した実家や古い住宅を賃貸として活用する場合は、修繕費だけでなく、相続登記や権利関係、税金などの確認も必要です。詳しくは「[相続した古い家を貸すときの注意点は?名義変更・修繕・税金まで解説](https://www.linkbb.jp/blog/entry-864816/)」をご覧ください。
「このケースは大家負担か入居者負担か分からない」「どこまで事前に修繕しておくべきか悩んでいる」という方は、まずはお気軽にご相談ください。

#空き家活用
#空き家賃貸
#賃貸修繕費
#修繕費負担
#大家負担
#原状回復
#原状回復費用
#賃貸トラブル
#賃貸借契約
#敷金精算
#大阪市空き家
#大阪空き家活用
#空き家管理
#賃貸経営
#古い家を貸す
#LinkBB