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空き家を貸す前に必要な修繕は?賃貸にする際の注意点とチェックリスト

空き家の有効活用

長く使っていない空き家を、このまま放置しておくべきか、それとも賃貸として貸すべきか悩んでいませんか。

空き家を貸す前に特に確認しておきたいのは、「建物の安全性」「設備の作動状況」「残置物」「修繕費と想定賃料」「賃貸借契約」の5つです。

築年数が古いからといって、すべてを新築同様にリフォームする必要があるとは限りません。一方で、雨漏りや床の腐食、電気・ガス・水道設備の不具合など、入居者の安全や生活に関わる部分は、貸し出す前に状態を確認し、必要に応じて修繕しておくことが重要です。

また、空き家を賃貸として活用する場合は、修繕だけでなく、室内に残された家具や家電などの残置物をどうするか、設備として何を残すか、どのような契約条件で貸すかといった点も事前に整理しておく必要があります。

判断を先送りにすると、建物の劣化が進み、将来的な修繕費が増える可能性もあります。反対に、必要以上にリフォーム費用をかけてしまうと、家賃収入で費用を回収するまでに長い期間がかかることもあります。

そのため、空き家を貸すかどうかは、建物の状態だけでなく、必要な修繕費、想定できる家賃収入、維持管理にかかる費用などを整理したうえで判断することが大切です。

本記事では、空き家を賃貸として活用したい所有者・大家の方に向けて、貸す前に必要な修繕や劣化チェック、残置物・設備の整理、契約・保険の注意点まで、チェックリストを交えながら分かりやすく解説します。

「空き家を貸す前に何をすればいいのか」「どこまで修繕すればいいのか」と迷っている方は、まずは必要な確認事項から順番に整理していきましょう。

空き家を貸す前に所有者・大家が確認すべき全体像

まずは、その空き家を貸すか貸さないかという出発点を整理することが大切です。
賃貸に出す場合には、見込まれる賃料収入から、固定資産税や修繕費、管理費などの支出を差し引いた収支を概算し、黒字になる見通しがあるか確認します。
さらに、老朽化による事故や近隣からの苦情といったリスクも踏まえ、売却や解体と比較したうえで、長期的に無理のない活用方法かどうかを検討する必要があります。
このように、感情だけで判断せず、数字とリスクの両面から冷静に方針を決めることが重要です。

空家法に基づき、地域の生活環境を損なうおそれのある空き家は「特定空家等」として市区町村から指導や勧告、命令などの措置を受ける場合があります。
勧告を受けた特定空家等の敷地では、固定資産税の住宅用地特例が外れるため、小規模住宅用地であれば課税標準が通常の6分の1から元に戻り、税負担が大きく増加する可能性があります。
さらに、改正空家法により、特定空家等になるおそれがある「管理不全空家等」についても、指導に従わず勧告を受ければ同様に住宅用地特例が解除される仕組みが整えられています。
空き家を放置すると、固定資産税の増加に加え、倒壊や防災上の危険など、近隣トラブルや行政指導のリスクが高まる点を理解しておく必要があります。

空き家を賃貸に出す際は、建物の状態や安全性を確認するだけでなく、必要な修繕費と想定できる家賃、維持管理にかかる費用などを整理したうえで、賃貸として活用できるかを判断することが大切です。

また、室内に残された家具や家電などの残置物をどうするか、どこまで修繕するか、どのような条件で入居者を募集するかについても、貸し出す前に方針を決めておく必要があります。

まずは、所有者・大家として最低限確認しておきたい項目を整理してみましょう。

確認項目 主な内容 チェックの目的
収支と活用方針 賃料収入と税金等の整理 赤字や過大な負担の回避
建物の安全性 劣化箇所や危険度の把握 事故防止と責任リスク低減
法的・税務面 空家法と固定資産税の確認 特例解除や行政措置の回避
賃貸条件の方針 修繕範囲や賃料水準の検討 入居後トラブルの予防

空き家を賃貸として貸すまでの流れ


空き家を貸したいと思っても、すぐに入居者を募集するのではなく、まず建物の状態や収支を確認し、必要な準備を順番に進めることが大切です。

特に長期間使われていない空き家では、外から見ただけでは分からない劣化や設備の不具合が生じていることがあります。また、修繕に多額の費用をかけたものの、周辺の家賃相場が低く、十分に回収できないケースも考えられます。

そのため、まず建物・設備の状態を確認し、周辺の家賃相場と必要な修繕費を把握したうえで、本当に賃貸として活用することが適しているのかを判断します。

空き家を賃貸として貸すまでの基本的な流れは、次のとおりです。

手順内容
① 建物・設備の状態を確認屋根・外壁・室内・水回り・電気・ガスなどの劣化や不具合を確認する
② 周辺の家賃相場を確認立地・築年数・間取りなどが近い賃貸物件の募集条件を確認する
③ 修繕費を見積もる安全確保に必要な修繕と、入居募集のためのリフォームを分けて検討する
④ 賃貸としての収支を確認想定家賃と修繕費、税金、保険料、管理費などから収支を検討する
⑤ 残置物を整理する家具・家電・私物などを整理し、設備として残すものを明確にする
⑥ 必要な修繕を行う優先順位を決め、安全性や生活に必要な箇所から修繕する
⑦ 賃貸条件を決める賃料・敷金・礼金・契約期間・修繕負担などの条件を整理する
⑧ 入居者を募集する不動産会社などを通じて募集し、入居希望者への案内や審査を行う
⑨ 契約・引渡し賃貸借契約を締結し、設備や鍵などを確認したうえで物件を引き渡す

すべての空き家でこの順番どおりに進める必要があるわけではありませんが、「修繕してから家賃を考える」のではなく、修繕前に家賃相場と収支を確認することがポイントです。

例えば、大規模なリフォームを行っても、周辺相場から家賃を大きく上げられなければ、修繕費の回収に長い期間がかかる可能性があります。反対に、最低限の修繕で安全性や生活に必要な機能を確保できれば、費用を抑えて賃貸活用できる場合もあります。

建物の状態や立地、想定家賃、修繕費によって適切な活用方法は異なるため、必要に応じて不動産会社や建築・修繕の専門業者などに相談しながら進めるとよいでしょう。

空き家の修繕・劣化状況チェックリスト

空き家を安全に貸すためには、まず建物外部の劣化や破損を丁寧に確認することが重要です。

国土交通省などの資料でも、外部と内部を分けた定期的な点検の必要性が示されており、屋根や外壁、基礎などの状態把握が基本とされています。
具体的には、屋根材のずれや欠け、外壁のひび割れ・浮き、基礎の亀裂、雨どいの詰まりや外れ、塀や門扉の傾きやぐらつきなどが主な確認ポイントになります。
特に、倒壊や部材の落下につながる恐れがある部分は、早めに専門家へ点検や修繕を相談することが、所有者・大家としての重要な役割になります。

次に、室内の状態を確認し、賃貸に出すうえで修繕が必要かどうかを整理していきます。
国や自治体の空き家管理チェックリストでも、床・壁・天井の傷みや雨漏り、カビ、害虫被害などを重点的に確認することが勧められています。
具体的には、床の沈みやきしみ、フローリングの浮き、壁紙のはがれやシミ、天井の変色やたわみ、水まわりの腐朽や配管の漏水跡、シロアリ被害の有無などを一つずつ見ていくと整理しやすくなります。
これらの点検結果を踏まえ、入居者の安全や衛生面に支障が出る部分は、貸し出す前に必要な修繕を行うことが望ましいといえます。

あわせて、電気・ガス・水道・給湯器などのインフラ設備についても、安全性と作動状況の確認が欠かせません。
国土交通省の資料では、賃貸住宅の維持保全では設備の点検と、その結果に応じた修繕を一体的に行うことが求められており、空き家を賃貸に切り替える際も同様の考え方が必要とされています。
ブレーカーや分電盤、コンセント周りの異常、ガス配管や給湯器の老朽化、水道メーターや配管の漏水、給水・排水設備の詰まりなどを確認し、少しでも不安があれば専門業者による点検や必要な改修を検討します。
特に長期間未使用だった空き家では、通電・通水後に不具合が見つかることも多いため、所有者・大家としては「貸す前の安全点検」を一つの区切りとして、計画的に修繕を進めていくことが大切です。

項目 主な確認内容 賃貸前の対応方針
建物外部 屋根外壁ひび割れ
基礎雨どい塀の損傷
倒壊落下防止の優先修繕
建物内部 床壁天井の劣化
雨漏りカビ害虫跡
安全衛生確保の必須補修
設備インフラ 電気ガス水道給湯器
漏電漏水作動状況
専門点検前提の修繕計画

空き家を貸す前の修繕はどこまで必要?

空き家を賃貸に出す際、「古い部分をすべてリフォームしなければ貸せないのではないか」と考える所有者・大家の方もいるかもしれません。

しかし、必ずしも新築同様の状態まで改修する必要があるわけではありません。大切なのは、入居者が安全に生活できる状態を確保したうえで、想定する家賃や入居者層に合わせて修繕の範囲を判断することです。

修繕箇所が多い場合は、すべてを同じ優先順位で考えるのではなく、「安全性に関わる部分」「日常生活に必要な部分」「入居募集に影響する部分」の順に整理すると判断しやすくなります。

■安全性に関わる部分は優先して修繕する

まず優先したいのが、入居者の安全や建物そのものに関わる不具合です。

例えば、雨漏り、床の腐食や大きな沈み、外壁や屋根材の落下のおそれ、漏電の危険がある電気設備、給排水管からの漏水などを放置したまま貸し出すと、入居後の事故や大きなトラブルにつながる可能性があります。

こうした箇所については、見た目をきれいにするリフォームよりも優先して状態を確認し、必要に応じて専門業者へ点検や修繕を依頼することが重要です。


■日常生活に必要な設備の作動状況を確認する

次に確認したいのが、キッチン、トイレ、浴室、給湯器、換気設備など、入居者の日常生活に必要な設備です。

長期間使われていなかった空き家では、見た目に問題がなくても、実際に水や電気を通してみると給湯器が作動しない、蛇口から水漏れする、排水がうまく流れないといった不具合が見つかることがあります。

そのため、賃貸に出す前には設備を実際に作動させ、正常に使用できるか確認しておくことが大切です。


■内装は想定する家賃や入居者層に合わせて判断する

壁紙の変色や床の傷、古い建具など、主に見た目に関わる部分については、必ずしもすべてを新品に交換する必要があるとは限りません。

内装をきれいにすれば入居者を募集しやすくなる可能性がある一方、必要以上にリフォームすると、家賃収入に対して修繕費が大きくなりすぎることもあります。

周辺の家賃相場や競合する賃貸物件の状態を確認し、「この修繕によって家賃を上げられるのか」「入居者が決まりやすくなるのか」という視点から費用対効果を考えることが重要です。

特に築年数の古い空き家では、見た目を新しくすることだけを目的に大規模なリフォームを行うのではなく、想定する賃料や入居者層とのバランスを考えながら修繕範囲を決めるとよいでしょう。

もちろんです。そのままブログに貼り付けられる表にすると、こちらです。

修繕の優先順位主な確認箇所基本的な考え方
雨漏り・構造・電気・給排水など安全性に関わるため優先して対応
キッチン・浴室・トイレ・給湯器など日常生活に支障がない状態を確認
壁紙・床・建具などの内装家賃や入居者層を踏まえて判断

空き家の修繕では、「古いから全部直す」のではなく、まず安全に貸せる状態を確保し、そのうえで賃料や入居者募集への効果を考えながら追加のリフォームを検討することがポイントです。


■修繕費をかけすぎないために収支と回収期間を確認する

空き家を賃貸に出すための修繕では、建物をきれいにすることだけでなく、かけた費用を家賃収入から無理なく回収できるかという視点も重要です。

例えば、月額7万円の家賃が見込める空き家に300万円の修繕費をかけた場合、単純計算では修繕費を回収するだけでも約43か月分の家賃収入が必要になります。

 300万円 ÷ 7万円 ≒ 42.9か月

ただし、実際の賃貸経営では、家賃収入のすべてを修繕費の回収に充てられるわけではありません。固定資産税や火災保険料、管理費、入退去に伴う費用、将来の追加修繕などが発生するほか、入居者が決まるまでの空室期間も考慮する必要があります。

そのため、「300万円かければきれいになる」という理由だけで修繕内容を決めるのではなく、修繕後に見込める賃料や入居の決まりやすさ、保有予定期間などを踏まえて判断することが大切です。

例えば、100万円の追加リフォームを行っても周辺相場から家賃をほとんど上げられないのであれば、その工事が本当に必要なのかを改めて検討する余地があります。一方で、給湯器や水まわりなど、入居者の生活に欠かせない設備については、家賃アップにつながらなくても必要な修繕となる場合があります。

空き家の修繕費を検討するときは、少なくとも次の項目を整理しておくと判断しやすくなります。

確認項目確認する内容
想定家賃周辺の類似物件から無理のない賃料を確認する
修繕費安全確保に必要な工事と追加リフォームを分ける
維持費固定資産税・保険料・管理費などを確認する
空室リスク入居者が決まるまでの期間も想定する
保有予定期間何年間賃貸として運用する予定か整理する

修繕費だけを見るのではなく、「いくらかけて、いくらで貸し、どの程度の期間で回収するのか」という収支全体から考えることが、空き家を無理なく賃貸活用するためのポイントです。


残置物・設備の取り扱いとトラブル防止チェックリスト

まずは、空き家の中に残っている物のうち、所有者の私物と、入居者に利用させる設備とを分けて考えることが大切です。

家具や家電などをそのまま使ってもらう場合でも、賃貸借契約書の設備欄に記載し、故障時の負担を明確にしておく必要があります。
一方で、明らかに不要な衣類や書類、壊れた家電などは、賃貸前に所有者側で処分しておくと、引渡し時のトラブル防止につながります。
このように、残す物と処分する物の線引きを事前に整理しておくことで、賃貸後の責任範囲が分かりやすくなります。

次に、古い家電や家具の中には、安全面で問題となるおそれがある物も含まれているため、注意が必要です。
古い暖房器具や延長コードなどは、経年劣化により火災リスクが高まることがあるため、できるだけ新しい製品に入れ替えるか、賃貸前に撤去することが望ましいとされています。
また、建物の一部にアスベストを含む建材が使用されている可能性がある場合には、国土交通省や環境省が示す法令や基準に従い、専門業者による調査や適切な処理を行うことが求められます。
危険物や適切に処理すべき廃棄物を放置したまま貸し出すと、入居者の安全確保や廃棄物処理法令上の問題につながるおそれがあるため、早めの確認が重要です。

さらに、設備や鍵の管理を事前に整理しておくことで、賃貸後の細かなトラブルも防ぎやすくなります。
給湯器や換気扇などの付帯設備については、通電や通水を行い、正常に作動するかを確認し、設備表に記録しておくと、故障時の対応が円滑になります。
また、鍵の本数を正確に把握し、引渡し時に交付した本数を契約書や引渡しチェックリストに明記しておくと、紛失や複製に関するトラブル抑止につながります。

あわせて、単身高齢者などの入居を受け入れる場合には、入居者が亡くなった後の賃貸借契約や室内に残された家財などへの対応についても、入居前に検討しておくことが大切です。具体的な対応方法については、国土交通省・法務省が公表している「残置物の処理等に関するモデル契約条項」などを確認し、必要に応じて専門家や居住支援法人などと連携して準備する方法があります。


■賃貸に出す前の室内や設備を写真で記録する

空き家を賃貸に出す前には、室内や設備の状態を写真で記録しておくことも大切です。

特に築年数の古い空き家では、壁や床の傷、クロスの変色、建具の劣化、設備の使用感などが入居前から存在していることがあります。こうした状態を記録していないと、退去時に「入居前からあった傷なのか」「入居後に生じたものなのか」を判断しにくくなり、原状回復をめぐるトラブルにつながる可能性があります。

そのため、入居者へ物件を引き渡す前に、壁・床・天井、水まわり、建具、収納、給湯器などの設備を撮影しておくとよいでしょう。すでに傷や汚れ、破損などがある場合には、部屋全体の状態が分かる写真に加えて、その箇所が確認できる近接写真も残しておくと、入居時と退去時の状態を比較しやすくなります。

写真を撮影する際は、次のような箇所を確認しておくと整理しやすくなります。

記録する箇所主な確認内容
壁・天井傷・汚れ・変色・クロスの剥がれなど
傷・へこみ・変色・浮きなど
キッチン・浴室・トイレ汚れ・破損・水漏れ・設備の状態など
建具・収納傷・破損・開閉状態など
給湯器・換気扇など設備の種類・外観・作動状況など
既存の傷・破損箇所全体写真と状態が分かる近接写真
種類と引き渡す本数
写真は撮影日が分かる状態で保存し、設備表や物件状況を確認するチェックリストなどとあわせて管理しておくと、入居時と退去時の状態を確認しやすくなります。

また、貸主側だけで記録を保管するのではなく、入居時に借主にも物件の状態を確認してもらい、既存の傷や設備の状態について認識を共有しておくことが重要です。

特に古い空き家では、経年による傷や劣化がすでに生じていることも多いため、貸す前の状態を記録しておくことが、退去時の原状回復をめぐるトラブル防止につながります。

項目確認内容対応の目安
残置物の整理私物と設備の区分不要物は賃貸前に処分
危険物・有害物古い家電やアスベストなど必要に応じて専門業者へ相談
設備・鍵管理設備表と鍵本数の記録契約書等とあわせて保管
入居前の状態記録室内・設備・既存の傷など写真とチェックリストで記録

空き家を賃貸にする際の契約・リスク管理チェックリスト

空き家を賃貸に出すときは、建物を貸せる状態に整えるだけでなく、賃貸借契約の内容や入居後に想定されるリスクについても事前に整理しておくことが重要です。

特に、契約期間、賃料、敷金・礼金、更新や途中解約の条件、修繕や原状回復の負担などは、貸主と借主の認識に違いが生じやすいポイントです。

また、将来的に所有者や家族が再び使用する可能性がある空き家では、どのような契約形態で貸すかについても検討する必要があります。

契約内容をあいまいにしたまま貸し出すのではなく、空き家を今後どのように活用する予定なのかまで考えたうえで、契約条件やリスクへの備えを整理しておきましょう。


■普通借家契約と定期借家契約の違いを確認する

空き家を賃貸に出す際には、「普通借家契約」と「定期借家契約」のどちらで貸すかについても検討しておく必要があります。

普通借家契約では、契約期間が満了しても契約が更新される場合があります。貸主が契約の更新を拒絶したり解約を申し入れたりする場合には正当事由が必要となるため、将来的に所有者や家族が再び住む可能性がある空き家では注意が必要です。

一方、定期借家契約は、あらかじめ定めた契約期間が満了すると、更新されることなく契約が終了する制度です。そのため、「数年後には自分や家族が利用したい」「将来的に売却や建て替えを検討している」といった空き家では、選択肢の一つになります。

ただし、定期借家契約には、契約方法や契約前の説明など法律上の要件があります。また、契約期間が1年以上の場合には、貸主は原則として期間満了の1年前から6か月前までの間に、契約が終了する旨を借主へ通知する必要があります。

定期借家契約だからといって、貸主の都合で契約期間の途中にいつでも退去してもらえるわけではありません。空き家を何年間貸したいのか、その後に自己使用や売却などを予定しているのかを整理したうえで、契約方法を検討することが大切です。

比較項目普通借家契約定期借家契約
契約期間満了後更新される場合がある原則として期間満了で終了
貸主からの更新拒絶正当事由が必要更新そのものがない
契約時の主な注意点一般的な賃貸借契約のルールを確認契約方法や事前説明など所定の手続が必要
向いているケース長期間継続して貸したい場合将来の自己使用・売却などを予定している場合

■原状回復と修繕費の負担区分を明確にする

賃貸借契約では、退去時の原状回復や入居中の修繕について、貸主と借主の負担範囲を確認しておくことも重要です。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、建物・設備等の自然的な劣化や通常の使用によって生じる損耗などについて、原則として借主に原状回復費用を負担させるものではないという考え方が示されています。

一方、借主の故意・過失や通常の使用方法を超える使い方などによって生じた損耗・毀損については、借主側の原状回復の対象となる場合があります。

そのため、どのような修繕を貸主が負担し、どのような場合に借主の負担となるのかを契約時に確認しておくことが、退去時のトラブル防止につながります。


■単身入居者の死亡時や残置物への対応を整理する

単身高者などの入居を受け入れる場合には、入居者が亡くなった後の賃貸借契約や室内に残された家財などへの対応についても検討しておくことが重要です。

国土交通省と法務省は、賃借人が死亡した場合の賃貸借契約の解除や残置物の処理を円滑に進めるため、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しています。

この仕組みでは、賃借人が受任者に対して、死亡後の賃貸借契約の解除や残置物の処理に関する事務を委任する方法などが示されています。

単に「死亡した場合は貸主が残置物を処分できる」と賃貸借契約に記載すればよいものではないため、モデル契約条項の内容を確認し、必要に応じて専門家や居住支援法人などと連携しながら準備することが大切です。


■火災保険や賠償リスクへの備えを確認する

火災や漏水、自然災害などに備えた保険の確認も、空き家を賃貸する際の重要なリスク管理です。

建物については、所有者側で火災保険などの補償内容を確認し、賃貸住宅として使用することが契約内容や補償条件に適合しているかを保険会社や代理店に確認しておくと安心です。

一方、借主については、自らの家財を補償する家財保険に加え、借主の責任による火災や漏水などで借りている建物に損害を与えた場合に備える借家人賠償責任保険などへの加入を契約条件とするケースがあります。

保険商品によって補償内容や対象となる事故は異なるため、「火災保険に入っているから大丈夫」と考えるのではなく、貸主側と借主側でどのようなリスクをカバーするのかを確認しておくことが重要です。

確認項目主な内容所有者の対応
基本条項・契約形態契約期間・賃料・普通借家・定期借家将来の活用方針も踏まえて条件を整理
原状回復・特約修繕負担・残置物処理ガイドライン等を確認
保険と賠償リスク火災保険・家財保険・借家人賠償補償内容と加入方針を確認

■空き家は住宅確保要配慮者向けの賃貸住宅として活用する方法もある

空き家を賃貸として活用する場合、一般的な入居者募集だけでなく、高齢者や障がい者、低額所得者、子育て世帯など、住まいの確保に配慮が必要な「住宅確保要配慮者」の住まいとして活用する方法もあります。

住宅セーフティネット制度では、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を「セーフティネット登録住宅」として登録する仕組みが設けられています。

空き家や空き室を所有しているものの、「築年数が古く一般の賃貸市場では入居者が見つかりにくい」「どのような人を対象に募集すればよいか分からない」といった場合には、こうした制度や居住支援の仕組みを活用することも選択肢の一つです。

また、2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法では、居住支援法人などと大家が連携し、入居者への安否確認や見守り、生活状況が不安定になった場合の福祉サービスへのつなぎなどを行う「居住サポート住宅」の制度も創設されています。

住宅確保要配慮者を受け入れる際、大家にとっては、家賃滞納や入居者の孤独死、死亡後の残置物、入居中のトラブルなどに不安を感じることもあります。

こうした場合には、居住支援法人などと連携することで、住まい探しの相談や入居支援だけでなく、入居後の見守りや生活支援などにつなげられる場合があります。国土交通省によると、居住支援法人は、住宅確保要配慮者への住宅情報の提供・相談や見守りなどの生活支援等を行う法人として、都道府県が指定する仕組みです。

そのため、空き家を貸す際には、一般の賃貸市場だけで入居者を探すのではなく、建物の状態や立地、間取り、想定賃料などによっては、住宅確保要配慮者の住まいとして活用できないか検討してみるのも一つの方法です。


■居住支援法人との連携で大家の負担を軽減できる場合もある

高齢者や障がい者などへの賃貸に関心があっても、「入居後に何かあったとき、自分だけで対応できるだろうか」と不安を感じる大家の方もいるでしょう。

居住支援法人は、住宅確保要配慮者の住まい探しや入居に関する相談などを行い、法人によっては入居後の見守りや生活支援、関係機関との連携などにも取り組んでいます。

また、2025年10月からは、居住支援法人の業務に、入居者からの委託に基づく残置物処理が追加されました。すべての居住支援法人が同じ支援を提供しているわけではありませんが、空き家の所有者だけですべてのリスクを抱えるのではなく、対応できる居住支援法人や福祉・行政などと連携して受け入れ体制を整えることも重要です。

検討項目主な内容
想定する入居者高齢者・障がい者・低額所得者・子育て世帯など
住宅の状態安全性・設備・必要な修繕などを確認
家賃設定周辺相場や入居者層を踏まえて検討
入居支援住まい探しや契約時の支援体制を確認
入居後の支援見守りや生活支援などの連携体制を確認
死亡時等への備え契約終了や残置物への対応方法を検討
空き家を「古いから貸しにくい」と判断する前に、必要な修繕を行ったうえで、どのような入居者であれば活用できるのかという視点から考えることで、新たな賃貸活用の可能性が見つかることもあります。
 

よくある質問(FAQ)


空き家を賃貸として活用する際は、「どこまで修繕すればよいのか」「古い家でも貸せるのか」「残置物はどうすればよいのか」など、さまざまな疑問が生じます。

ここでは、空き家を貸すことを検討している所有者・大家の方から想定される、よくある質問をまとめます。

Q. 古い空き家でも賃貸として貸すことはできますか?
古い空き家でも、建物の状態や立地などによっては賃貸として活用できる可能性があります。
築年数だけで判断するのではなく、雨漏りや床の腐食、外壁・屋根の劣化、電気・ガス・給排水設備などを確認し、入居者が安全に生活できる状態かどうかを確認することが重要です。
また、修繕費が高額になる場合には、想定できる家賃や保有予定期間などを踏まえ、賃貸として活用した場合に費用を回収できるかも検討しましょう。

Q. 空き家を貸す前にどこまで修繕すればよいですか?
必ずしも新築同様にリフォームする必要はありません。
まず優先したいのは、雨漏りや床の腐食、漏電、漏水など、入居者の安全や日常生活に影響する箇所です。次に、キッチン、浴室、トイレ、給湯器など、生活に必要な設備が正常に使用できるかを確認します。
壁紙や床材など主に見た目に関わる部分については、周辺の家賃相場や想定する入居者層、リフォームによる募集への効果などを踏まえて判断するとよいでしょう。

Q. 家具や家電が残っている空き家はそのまま貸せますか?
家具や家電が残っている場合は、そのまま貸し出すのではなく、所有者の私物として撤去するものと、賃貸住宅の設備として残すものを整理しておくことが大切です。
設備として残す場合には、故障したときの修理や交換を誰が負担するのかなどについて、契約内容や設備表で明確にしておくとトラブル防止につながります。
不要な家具や家電、生活用品などについては、原則として入居者を募集する前に整理しておくとよいでしょう。

Q. 空き家を貸す場合は普通借家契約と定期借家契約のどちらがよいですか?
どちらが適しているかは、所有者がその空き家を将来どのように利用する予定なのかによって異なります。
長期間継続して貸したい場合は普通借家契約が選択肢になります。一方、数年後に所有者や家族が使用する予定がある場合や、将来的な売却・建て替えなどを予定している場合には、定期借家契約を検討する方法があります。
ただし、定期借家契約には契約方法や事前説明など法律上の要件があります。「定期借家契約なら貸主の都合でいつでも退去してもらえる」というものではないため、契約内容を十分に確認して選択することが重要です。

Q. 入居者が退去するときの原状回復トラブルを防ぐにはどうすればよいですか?
賃貸に出す前に、室内や設備の状態を写真やチェックリストで記録しておくことが有効です。
特に、壁や床の傷、クロスの変色、建具の破損、設備の状態など、入居前から存在する傷や劣化を記録しておくことで、退去時に入居前と入居後の状態を比較しやすくなります。
また、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」などを参考に、貸主と借主の負担区分について契約時に確認しておくことも大切です。

Q. 高齢者や障がい者などに空き家を貸すことはできますか?
建物の状態や入居条件などに問題がなければ、高齢者や障がい者などの住宅確保要配慮者の住まいとして空き家を活用することも選択肢の一つです。
住宅セーフティネット制度には、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を登録する仕組みがあります。また、居住支援法人などと連携し、住まい探しや入居時の支援、入居後の見守りや生活支援などにつなげられる場合もあります。
「高齢者や障がい者に貸したいが、入居後の対応が不安」という場合には、所有者だけで判断するのではなく、居住支援法人や不動産会社などへ相談しながら受け入れ方法を検討するとよいでしょう。

Q. 空き家を貸すか売るか迷っている場合は、何を基準に判断すればよいですか?
まず、賃貸にした場合に見込める家賃収入と、必要な修繕費、固定資産税、保険料、管理費などの維持費を整理することが重要です。
賃貸として十分な収益が見込める場合や、将来自分や家族が使用する可能性がある場合には、所有したまま貸す方法が選択肢になります。
一方、多額の修繕費が必要で家賃収入による回収が難しい場合や、今後その家を利用する予定がない場合などは、売却を含めて比較検討した方がよいケースもあります。
「貸す」「売る」のどちらかを最初から決めるのではなく、建物の状態、修繕費、想定家賃、維持費、将来の利用予定などを整理して判断することが大切です。


まとめ

空き家を貸す前には、建物の劣化や設備の安全性、残置物の整理、契約内容などを事前にチェックすることが重要です。
必要な修繕や処分をあいまいにしたまま賃貸に出すと、思わぬ費用負担や入居者とのトラブルにつながります。
一方で、ポイントを押さえて準備すれば、空き家は安定した家賃収入を生む資産に変えることができます。
当社では、空き家の現地確認から修繕・残置物・契約内容の整理まで、所有者・大家の状況に合わせて丁寧にサポートします。
「自分の空き家を貸すべきか迷っている」「何から手を付ければよいか分からない」という方は、まずはお気軽にご相談ください。


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